ここでは、でんさいを利用するにあたり、事前に知っておきたい基礎知識についてまとめています。
でんさいは、電子記録債権の代名詞になるほど普及が進んでいますが、導入後はどんな効果が期待できて、使い勝手はどうなのか気になる方もいるでしょう。
そこで、疑問に感じることが多いと思われる項目について簡単に解説していくことにします。
でんさいは、企業の資金調達の円滑化や生産性を向上させることを目的として国のIT戦略の一環として創設されました。
手形や売掛債権をそのまま電子化しただけではなく、これまでの問題点を解消した金銭債権となっているのが特徴です。
具体的なメリットとしては、紙の手形で課題となっていた事務負担が軽減できたり、搬送費や印紙税などのコストの削減、紛失や盗難リスク回避などが挙げられます。
デメリットは少ないですが、会計処理が変更になったり、自社だけでなく取引先に対してもでんさいへの申込みを協力してもらう必要があるのは、デメリットとして挙がります。
しかし、会計処理が変更になるといっても、処理が複雑になるわけではなく、これまで使用していた支払手形/受取手形という勘定科目が、でんさい利用では電子記録債務/電子記録債権となるだけ。
また、全国銀行協会が中心となって運営しているため、参加企業は都市銀行から地方銀行、信用金庫など600行以上あり、銀行と取引がある企業であれば、すぐに利用をスタートできるのも特徴の一つです。
利用料金に関しては、完全従量制なので契約料や月額利用料といったものはなく、利用分の手数料を支払うだけで済みます。
全国銀行協会のでんさいサービスに参加する金融機関は、都市銀、地銀、信金、信組あわせて、約600行。
エリア別の主な金融機関は下記のとおりです。
全国対応 | みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、他5行 |
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東日本 | |
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北海道 | 北海道銀行、北洋銀行、他36行 |
東北 | 青森銀行、秋田銀行、他63行 |
関東 | 群馬銀行、ちばぎん、他73行 |
東京 | 東京都民銀行、東日本銀行、他50行 |
甲信越 | 山梨中央銀行、長野銀行、他45行 |
東海 | 静岡銀行、愛知銀行、他113行 |
北陸 | 北陸銀行、北國銀行、他33行 |
西日本 | |
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関西 | 滋賀銀行、京都銀行、他64行 |
中国・四国 | 中国銀行、広島銀行、他76行 |
九州 | 福岡銀行、鹿児島銀行、他75行 |
でんさいの手数料は取引金額に左右されない従量制。一方、手形取引は100万円程度なら印紙税は400円、1千万を超えれば4,000円にもなります。取引金額が大きい企業ほど、でんさい導入時の節税効果を得られるでしょう。
でんさいで発生する主な手数料と主要都市銀の料金帯は下記の通りです。
発生記録請求
手形の振出に相当するもので、債権者(債務者)が負担する手数料。一万円以上100億未満で発生します。
自行 | 324円~432円 |
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他行 | 648円~864円 |
譲渡記録請求
手形の裏書に相当するもので譲渡人が負担する手数料。複数先へ分割して譲渡する場合は一件ごとに手数料がかかります。
自行 | 216円~432円 |
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他行 | 540円~864円 |
決済手数料
手形の取り立てに相当するもので債権者が負担する手数料。216円
支払等記録手数料
口座間決済以外での決済や債権が無効になった場合に発生。依頼者が負担します。432円~1,080円
でんさいの譲渡は、手形の裏書譲渡と同じように第三者に譲り渡すことが出来ます。もちろん、ペーパーレスですので裏書の必要はありませんし、記録原簿に譲渡を記録するだけなので、余計な手間も時間も省けます。
更に、でんさいの場合は、必要な金額を分割して支払先に譲渡することが出来るのです。手続きは債権者が単独で行う事ができ、また、分割する子債権が10,000円以上であれば何回でも分割する事が可能。
下記の注意事項さえ把握しておけば、支払先が複数ある場合などには有効活用できます。
分割譲渡の注意点
でんさい導入後は、新たな勘定科目として「電子記録債務」「電子記録債権」が加わります。これまでの支払手形/受取手形にならって、電子記録債務/電子記録債権を使用するだけですので、そう難しく考える必要はありません。
また、でんさいで譲渡を行った場合の割引の科目には「電子記録債権売却損」という勘定科目を使用しなければなりません。
新しい勘定科目の使用に慣れさえすれば良いので、会計処理に悩む事はそうないでしょう。
企業が手形取引を行う際に考えるリスクは、経費負担や事務の時間手間、資金繰り悪化などです。実際にでんさいを導入した企業の声を聞くと、そういった手形取引のリスクやデメリットを解消できたという企業がほとんど。
こちらはその一部を、要約したものです。
電子記録債権
2008年施行の電子記録債権法に基づいて作られた新しい金銭債権。でんさい、電ペイ、電手、支払手形削減サービスがこれにあたる。
電子手形
電子記録債権と同様の意味。電手と略されるが、三菱東京UFJ銀行の電手とは異なる。
電子債権記録機関
電子記録債権を記録、管理する機関。でんさいの場合は、全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)がこれにあたる。
電子記録債権法
2008年に国会において可決成立した「電子記録債権の発生・譲渡」や「記録業務を行う電子債権記録機関」についての法律。
発生記録
手形取引でいうところの発行(振出し)にあたる。
譲渡記録
手形でいうところの裏書譲渡にあたり、譲渡を記録原簿に記録することを差す。
分割記録
電子記録債権を分割して譲渡すること。
でんさい割引
手形割引と同様、でんさいの割引。金融機関に譲渡する事で割引を行える。
実際にでんさいを導入した企業の声を集めてみると、事務負担が減り、コスト削減につながったというところが多く、当初の目的は達成できていると考えてよいでしょう。
すでに利用企業は40万社を超えていますが、現在の普及率と利便性の高さを考えると、今後は中小企業の利用がさらに拡大していくと予想されます。
なお、でんさいのメリット・デメリットや導入効果についてはさらに詳しく解説していますので、もっと理解を深めたいという方は、是非参考にしていただければ幸いです。
でんさいの安全性は、全銀電子債権ネットワークによる法的手当てや支払不能処分制度、審査、そして金融機関による利用制度などで守られています。
支払不能処分制度
期日に支払い不能となって支払いが行われなかった場合、債務者に関する情報が全参加金融機関に通知される(債務者の信用に関しない支払不能を除く)。過去6か月以内に2回以上の支払不能があった場合、その情報が全参加金融機関に通知され、各当する債務者は取引停止処分を受ける。
利用者の審査と法的手当て
属性要件や経済的要件、利用者資格要件など幾つかの審査をクリアした事業所のみが利用可能。「権利内容・帰属の可視化」「意思表示に関する第三者保護」他5項目の法的手当てによって利用者の権利を守り、安全性を高めている。
金融機関による利用制限
金融機関により、利用可能限度額や契約期間に利用制限が設けられている。
ネット上から利用者情報変更にアクセスして変更登録が行える場合、表示される変更依頼書を印刷し、必要事項の記入と捺印、本人確認書類を添えて提出という流れが一般的です。FAXサービスを利用している場合は、コールセンターへ連絡して変更依頼書を流してもらう事も可能。
代理人が来店して手続きを行う場合は、代表者の本人確認書類と併せて代理人の本人確認資料を求められる可能性もあります。来店前に金融機関へ確認しておくと良いでしょう。
また、代表者の住所変更がある場合は、窓口金融機関へ変更の届出が必要です。各金融機関によって届け出の仕方が異なるので、こちらも来店前に電話等で問い合わせてみて下さい。
でんさいでは、全ての利害関係者の承諾を得られれば支払期日を変更することが出来ます。ただし、承諾を得るのは支払い期日の7銀行営業日以前の日まで。これを過ぎると例え承諾を得られていたとしても延期は出来ません。
手続き方法は利害関係者の人数によって異なります。 記録等が行われる前の状態で債務者と債権者しか利害関係者がいない場合は、どちらか一方が変更記録請求を行い、そこより5銀行営業日以内に相手方の承諾を受ける必要があります。
また、記録等が済んだ後の状態で3名以上の利害関係者がいる場合は、利害関係者全員が変更記録の請求を行わなければなりません。 各金融機関によっても手続き方法は異なりますので、窓口金融機関への問い合わせをおすすめします。
でんさいは、従来の商取引のように、券面や契約書などをわざわざ作成する必要はありません。すべてを記録原簿に記録指定管理しているためペーパーレスで取引を進めることが出来るのです。
ただ、でんさいを利用するには取引先企業の承諾が必要となり、もともと交わしていた取引基本契約書を改訂しなければならない可能性があります。また、既に取引先の方でもでんさいを利用している場合は、でんさい利用者番号を確認するのみで済む場合も。
インターネット上に取引先への連絡文がひな形として公開されていますので、これからでんさいを利用される方は、確認してみると良いでしょう。
電子記録債権を使った場合、譲渡が可能となっており、割引が発生した場合は借方に「電子記録債権売却損」という勘定科目を使用しなければなりません。従来の手形とは異なり、裏書や割引といった書き方はしないので注意が必要。
新しい勘定科目として「電子記録債権」「電子記録債務」「電子記録債権売却損」が加わりますが、そう難しい会計処理になるわけではありません。会計ソフトをご検討の方は、でんさいに対応した会計ソフトとそうでないものがあるので気を付けましょう。
でんさいは「電子登録債権」、ファクタリングは「売掛債権」。それぞれ種類が異なる債権です。
でんさい
株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)により銀行間の決済システムが可能。取引をよりスムーズに便利に行うために作られた新しい債権で、銀行のネットワークが携わっているため信頼性が高い。
ただ、手形を発行した会社が倒産したなどの理由で支払いを行わなくなった場合でも銀行に支払いをする義務がある。
ファクタリング
ファクタリング業者を通じて取引を行うため、取引先が増えた際は新たな契約が必要となり手間がかかる。ただ、電子手形とは違い、手形を発行している会社が倒産した場合は銀行に支払いを行う義務は発生しない。
実際にでんさいを利用してみようと考えたとき業者選びをすることになります。当然、業者を選ぶとき頭に入れておきたいポイントがあります。特に抑えておきたいポイントは3つです。
1つ目は経営期間です。まだ発展途上のサービスであり、加えて認知度もまだまだの部分があります。利用者としては「本当に利用しても大丈夫なのか?」と心配になってしまうわけです。その不安を取り除く1つの方法として経営期間が長い業者を探すということです。経営期間が長ければ長いほど、それだけ問題なくサービス提供をしてきたという証明になるからです。
2つ目は、取り扱っているサービスの範囲の確認です。もう少し具体的に説明をすると、個人向けにサービス提供してくれる業者なのか?それとも企業や団体向けに対してサービス提供をしているのか?ということです。業者によって、細かくサービス対象が異なるため注意が必要になってくるわけです。
最後の3つ目は、やはり業者の雰囲気です。でんさいを利用したいと思った業者があり、店舗に足を運べるのであれば運んでおきたいところです。雰囲気が良い場合は、質の高い満足のいくサービスが期待できるからです。もちろん鵜呑みにはしてはいけませんが、1つの判断材料になることは間違いありません。
売掛金や手形に変わる新しい決済手段が、電子記録債権となります。中小企業の新しい決済手段として生み出されているため、手軽さがセールスポイントになります。そして、この電子記録債権を使ったローンというサービスが提供され始めています。
電子記録債権は、簡単に言ってしまえば「債権を電子データ化し決済をする方法」です。つまりネットさえあれば簡単にできてしまうわけです。通常、売掛金や手形の場合は、印紙税だったり、人が作業を行うためミスがあったり、何よりも現金化に時間が掛かってしまうデメリットが。それを全て解消してくれているのです。
これを踏まえ、電子記録債権を使ったローンの特徴を見ていくと、こんなことが見えてきます。「いったいわない」のトラブルが起きないということだったり、債権の権利関係がひと目で分かったり、資金調達までのスピードが早かったり、そして二重譲渡のリスクが全くないということが。まさに至れり尽くせりです。
このように記載をしてしまうと、新しいサービスで手が出しにくいと感じてしまうかもしれませんが、大まかな流れは今までの売掛金、手形と全く変わりません。細かい部分で違いはあるものの、サービス自体は大きく変わるわけではないため、安心して利用することができます。