ここでは電手のサービス概要やでんさいとの違いについて解説しています。
電手とは、三菱東京UFJ銀行を運営主体とする、従来の一括ファクタリング(一括支払信託)を進化させた決済サービスです。
支払企業(債務者)が、三菱東京UFJ銀行を通じて電子手形(電手)発生記録申請をすると、納入企業(債権者)に対して債権発生を通知。その後、電手を受け取った納入企業は、一般的な手形のように割引や譲渡を行なって、資金化することが可能になります。
一括ファクタリングと同様にペーパーレスなので、紙の手形のような盗難・紛失のリスクは無く、書面の保管のコストも削減できるのが特徴です。
また、電子手形の一部を割引して資金調達をして、残りを譲渡して資金決済というような使い方をすれば、納入企業は資金繰りに柔軟性を持たせることができます。
さらに、電手には、一般の手形のような買い戻し義務は発生しないため、割引さえしてしまえば、確実に資金を調達できるというのも注目できます。
なお、支払企業にとっては、期日現金振込・手形支払・一括決済を一本化して支払事務の効率化ができ、ペーパーレスなので手形発行に関する事務手続とコストを削減できるというメリットがあります。
電手とでんさいを比較した時の一番の違いは、互換性です。でんさいは全国銀行協会が提供するサービスなので、都銀や地銀なども含めて共通に利用できますが、電手は三菱東京UFJ銀行が単独で提供しているため、互換性はありません。
電手の運営会社を詳しく説明すると、商品提供は三菱東京UFJ銀行、事務代行は三菱UFJファクターが行なっており、データの保存運営は、日本電子債権機構(JEMCO)が担当しています。
日本電子債権機構は、三菱東京UFJ銀行の100%子会社ですので、組織的にもシステム的にも、他の金融機関とはつながっていません。
したがって、電手の利用者の中で、振出側企業は三菱東京UFJ銀行と取引のある大企業で、受取側企業は、その大企業から支払いを受ける限られた企業という構図になっています。
また、電手には厳格な審査があるため、受取側企業として利用することはあっても、よほど信用がある大企業でなければ、振出側として利用することは難しくなっています。
でんさいのように、中小企業も含めた手形のペーパーレス化を目指したサービスと比べると、汎用性は低く、大企業向けのサービスと考えてよいでしょう。
電手 | でんさい | |
---|---|---|
運営主体 | 三菱東京UFJ銀行 | 全国銀行協会 |
参加金融機関 |
都市銀行3行 地方銀行43行 |
全国1400以上 |
使いみち | ファクリングの代替 | 手形の代替・ペーパーレス化 |
ターゲット | 大企業 | 大企業~中小企業 |
電手とでんさいを比較しもっとも違いが大きいのは、その取扱銀行の数です。
電手は三菱東京UFJ銀行が主体となって展開しているサービスですので、でんさいと比較して取扱銀行の数は少ないです。
でんさいは「全国銀行協会」が提供しているため、地銀や信用金庫なども利用可能です。
電手を取り扱っている都市銀行が3行であるのに対しでんさいは5行、地方銀行においては電手が43行であるのに対して90行以上、その他信用金庫など多数の金融機関が取り扱っているため、利用用途が幅広い場合の電手よりでんさいの方が利便性は高いと言えるでしょう。
ちなみに、電手のようなサービスはほかの都市銀行も展開しており、三井住友銀行は「支払手形削減サービス」、みずほ銀行は「電子債権決済サービス(通称:電ペイ)を提供しています。
支払手形削減サービスも電ペイも、サービス内容や用途は電手と似ています。
電手もでんさいも同じ電子記録債権ですが用途は異なります。
電手は、一括ファクタリングのように電子取引を行いつつ手形のように割引や回しが可能で、法律的な安定性があるのが特徴です。
電子は「一括ファクタリング」に関連したサービスのため、利用においては厳しい審査があり、大企業向けの支払いシステムです。
これに対してでんさいは、これまでの手形のように誰でも支払いに活用することができます。
では、電手を提供しているからでんさいには参加していないのかというと、三菱東京UFJ銀行もでんさいに加入しています。
これには、大企業を自社のシステムで囲い込みしつつ、中小企業のビジネスも取り扱うことができるようにするという戦略によるものだと考えられています。
でんさいは、これまでの手形のシステムに改良を加えた決済システムで、「でんさいネット」には全国で1400もの金融機関が参加しています。
業種を問わず資金決済に使用することができ、全国銀行協会が100%出資をしている会社が、金融庁の認可のもと運営しています。
電手は三菱東京UFJ銀行が主体となって運営しているのに対し、でんさいは国のIT戦略のひとつとして展開されています。
中小企業がでんさいを利用することで、資金調達を円滑化させ、生産性を向上させることを目的としています。
でんさいは、手形を金融機関から買い戻しするよう指示があった際、それに応じなければなりませんが、電手は不渡りになっても買い戻す義務がありません。
電手はデフォルトリスクを銀行側が負うので、振出側のリスクが小さいという点がメリットです。
さらに電子はFAXでのやり取りも可能なので、パソコンがなくても取引できるという点もメリットだといえます。
しかし、電手は信用力のある企業でないと振出人になることができないため、従来の手形のような利用をする場合はでんさいが適しています。
また、電手はでんさいと比較すると参加している金融機関が少ないため、その点もでんさいに軍配が上がります。
電手とでんさいは利用用途が異なるため、用途に合わせてどちらを利用すればよいのか判断するとよいでしょう。
他の電子記録債権についても見てみる